マンションの壁や床下に隠された排水管。その構造やレイアウトも重要ですが、どのような「材質」で作られているかも、建物の寿命やメンテナンス計画に大きく影響します。現在、そして過去のマンションで主に使用されてきた排水管の材質は、大きく分けて「塩化ビニル管(塩ビ管)」と「鋳鉄管(ちゅうてつかん)」の二つです。築年数が比較的新しいマンションで主流となっているのが塩ビ管です。正式には硬質ポリ塩化ビニル管と呼ばれ、軽量で施工しやすく、錆びないという大きなメリットがあります。内面が滑らかなため汚れが付着しにくく、耐薬品性にも優れています。価格も比較的安価なため、現在の建築では最も一般的に使用されています。その耐用年数(寿命)は、一般的に40年以上とされていますが、油汚れや熱湯によるダメージ、地震などの物理的な衝撃によって劣化が早まることもあります。一方、築30年以上の古いマンションで多く見られるのが鋳鉄管です。その名の通り、鉄を鋳造して作られた管で、非常に頑丈で耐火性や遮音性に優れているのが特徴です。しかし、最大の弱点は「錆び」です。長年使用するうちに、管の内外面に錆が発生し、錆こぶとなって水の流れを阻害したり、管の厚みを薄くしたりします。特に、配管の接続部分から錆が進行し、漏水を引き起こすケースが少なくありません。鋳鉄管の耐用年数は、使用環境にもよりますが30年から40年程度とされており、築古マンションでは、この鋳鉄管の劣化が大規模修繕工事の大きな課題となっています。最近では、鋳鉄管の内側を樹脂でコーティングし、寿命を延ばす「更生工事」という手法もありますが、根本的な解決のためには、新しい塩ビ管などに交換する「更新工事」が必要となります。自分の住むマンションの排水管がどの材質で、築何年経っているのかを把握しておくことは、将来的な修繕計画を考える上で非常に重要です。
塩ビ管と鋳鉄管?マンション排水管の材質と寿命